大学生の就職活動とVRの活用について考えてみた
Jan 16, 2022 23:35 · 4856 words · 10 minute read
「大学生の就職活動におけるVRの活用」について考えてみました。
目次
きっかけ
最近VRデビューをした。そんなタイミングで見かけて気になったのが下記のニュース。
これからは就活にもメタバース? 就職相談ができる仮想空間サービス - ITmedia NEWS
この事例では、メタバースで自分のアバターを作って就職活動の相談ができるらしい。
「ビデオ通話を使った面談よりも情報量が多いので、採用する側の企業にとってはメリットがあるのかもしれないが、学生にとってはメリットが少ないのでは?」と感じた。
サービスの特性上、企業に向けてサービスを提供することは重要だが、学生の目線に立ったサービスも需要があるはず。 今回は、学生側の目線で就職活動におけるVRの活用について考えてみる。
そもそもVRとは?
VR活用の話をする前に、そもそもVRとはどのようなものだろうか。
VRは「Virtual Reality」の略称で、日本語では「仮想現実」と訳されることが多い。しかし、英語本来の意味合いは、日本語訳から受ける印象とは少々異なる。
ロングマン現代英英辞典で「Virtual」を調べると、
- 非常に特定のものに近い(very nearly a particular thing)
- 現実の世界ではなく、インターネットやコンピューターで作成、実行、表示など(made, done, seen etc on the Internet or on a computer, rather than in the real world)
と定義されている。
日本語の「仮想空間」は空虚で実在しないものであるような印象があるが、本来の英語の意味では「特定のものに非常に近く、現実世界ではなくコンピュータ上で実在しているもの」というような意味合いがある。
virtual | ロングマン現代英英辞典でのvirtualの意味 | LDOCE (ldoceonline.com)
言葉遊びのように聞こえるかもしれないが、実際にVRを活用している人達は英語本来の意味に近い認識らしい。彼らはVRが「現実世界と近い」もしくは「部分的には現実を超える経験や体験をできる」場所と述べている。
前置きが長くなってしまったが、言いたかったことは、「VRを侮るなかれ。うまく活用することで、現実世界に勝るとも劣らない経験を積むことができるので、活用する価値がある。」ということである。
結局VRで何ができるの?
「概念の話はわかった。それよりも、具体的に何ができるのかを知りたいんだけど」と思ったかもしれない。
VR活用の具体例として、実際に開催された大規模イベントについて紹介する。
VRの世界では、既に多くの大規模イベントが開催されている。
先日開催された「バーチャルマーケット2021」では、VR上に渋谷や秋葉原の街を作り、大丸松坂屋、ローソンやBEAMS、小学館といった大企業が店を構えていた。
世界最大級のイベントであるSXSW(サウスバイサウスウエスト)もVRを活用している。
他にも、米津玄師や宇多田ヒカルといったアーティストが、VRやメタバースと呼ばれる技術を活用したコンサートを開催している。
このように、VRを活用した事例が次々と生まれている。
大学生にとって役立つVRの機能とは?
話を大学生の就職活動に戻す。
大学生目線の就職活動を考えたとき、どのようにVRが活用できるだろうか?
大学生側のメリットとして思いつくのは、「集団面接の練習」や「大勢の人の前で話をする度胸をつけること」、あとは「就活生同士のコミュニケーション」など。
ということで、大学生目線にたった、就職活動シーンでのVR活用例を考えてみる。
大学生のVRの活用案
ターゲット
- 大学2年生or大学3年生で、これから就職活動が始まる人。
- 大学生活が始まってから、ずっとコロナウイルスによる生活の制限を受けており、コミュニケーションへの渇望がある人。
活用案1:集団面接の練習
VR空間には、オフィスのようなワールドや、会議室のようなワールドも存在する。
複数人でワールドに参加することもできるので、複数人参加型で集団面接のような受け答えを練習することができる。
これまでのビデオ会議システムと比較したVRの強みは、アバターの動きを通して人の動きを感じられること。ビデオ通話でも相手の顔を見ているはずではあるが、どうしても発言タイミングが重なる、いわゆる”お見合い”が発生する。
VRアバターは体の動きも表現することができるので、アバターの動きを通して、別の人が発言しようとしていることを感知することができる。
従来のオフライン会議で発生していなかった”お見合い”がビデオ会議で頻発しているのは、このような言語によらない情報があったからとも言われている。
また、VRを活用することで、アバターを通して自分がその場にいることを体験することができる。複数人がいる場で、面接官を目の前にして受け答えするという緊張感を現実に近い形で疑似体験することが可能となる。
活用案2:大勢の前で話す練習
VR空間には、巨大な会議室や講演ができるようなワールドが存在する。
このワールドに参加することで、大勢の前で話す経験を積むことができる。
大勢の前で話す経験を積むことで、集団面接や選考時のプレゼンで有利になるだろう。
画像参照元: イベントの"バーチャル化"支援、clusterが即日開催できるパッケージ販売開始 | Mogura VR
画像参照元: ‘VR Chat’ Used to Deliver One of the First University Lectures in Virtual Reality (roadtovr.com)
もっと手軽に経験を積むのであれば、3Dに対応したYouTube動画や、180°の視野角をカバーしたYouTube動画を使うことも可能。講演中の様子を壇上から撮影するだけでオリジナルコンテンツを作成することもできる。
また、動画を再生するだけなので、VRと違って複数人で予定を調整することなく練習ができるというメリットもある。
活用案3:就活生同士のコミュニケーション
ここがVRの一番の強みかもしれない。VRを使ったSNSでは、バーチャル空間で他者と交流することができる。
2022年現在の大学生はコロナウイルスの影響で制限のある生活をしてきたのではないかと思う。特に地元や親元を離れて一人暮らしをしている大学生は強く孤独を感じることもあったのではないだろうか。
VRを使うことで、不足していた他者とのコミュニケーションを補うことができる。
VRでのコミュニケーションについては、文章で説明するよりも、下記の動画を見ていただくのが良いだろう。
この分野に精通ししてい方がVR空間でのコミュニケーションの魅力について語っている。
動画は少し長いので要点をまとめると、このような内容を語っている。
- VRの活用はどんどん広がっており、日本企業も海外企業もVRの世界に参入し始めている。
- Facebookも社名をMetaに変更し、これからメタバース(≒VRの世界)の発展に注力する。
- VRの世界でできることは現実世界に近しい。現実世界で友達と遊んだり、喋ったりするようなことは大抵VRの世界でもできる。
- コロナウイルスの影響で、この2年間世界中の人々は行動を自粛し、やりたいことを我慢する生活を送ってきた。しかし、一足先にVRを活用しはじめた人たちは、これまでと変わらず、むしろこれまで以上に充実した2年間を過ごすことができた。
- VRの世界では、アバターを介してコミュニケーションをするので、実際に対面するよりも相手の外見に影響されない本質的な部分に目を向けることができる。
必要なソフトと機材
ここまで「VRとはどのようなものなのか」「どのような活用事例があるのか」「VRを大学生の就職活動にどのように活用できそうか」について書いてきた。
VRの活用を開始するには機材が必要なので、必要な機材についても記載する。
必要なソフト
VRを活用したサービスは多くある。今回は利用者も多く、事例や日本語情報も多い「VR Chat」というサービスに絞って必要な機材を紹介する。
VR Chatには、Oculus Quest版とパソコン版が存在する。
OculusQuestの場合は、Oculus Quest内のアプリストアからVR Chatアプリをインストールする。
パソコンの場合は、VR Chatのパソコン用ソフトをインストールする。頭部にディスプレイを装着するOcularQuest2と違い、360°のVR空間を体験することはできないが、他者とのコミュニケーションを取ることは十分にできる。
Oculus Quest版とPC版の使い分け
対象である大学生の金銭面を考えると、普段のコミュニケーションは後述する「Step1」の環境を使い、面接の練習や人前で話す練習は「Step2」以降の環境でやるのが良いと考えている。
特に就職活動においては「Step2」の環境が大学やゼミにあると良いのではないだろうか。
Step1
- 「パソコン単体」もしくは「Oculus Quest2単体」
パソコンは、大学生がレポート作成などに使っている通常スペックのパソコンを使う。
パソコンを既に持っている場合は、追加出資の必要はない。
Oculus Questを購入する場合は、Amazonで37,000円程で購入することができる。
Step2
- 「Oculus Quest2」と「VR対応のパソコン」
利用状況にもよるので一概には言えないが、大人数でVR空間に集まる場合にはOculus Quest2だけでは性能が足りない可能性がある。大人数での利用が想定される場合には、PC版を使うのが良いだろう。
パソコンにOculus Questを接続することで、パソコンに負荷の高い処理をさせつつ、Oculus Questをヘッドマウントディスプレイとして利用することができる。
パソコンを購入する場合は、「VR Ready」という指標を目安に、予算と相談して検討する。
VRが快適に楽しめるVR Readyとは?VRにおすすめなゲーミングPCなど詳細情報を公開! | VR Inside
VIVE VR READY 推奨モデルの通販・価格/性能比較|パソコン通販のドスパラ【公式】 (dospara.co.jp)
Step3
- 「Oculus Quest2」と「非常に性能の高いパソコン」
「VRの世界を楽しむだけではなく、自分が作る側に回るんだ!」という人は性能の高いパソコンがあったほうが良い。
実現したい内容と予算の兼ね合いで、必要な性能を満たすパソコンを調達するのがよいだろう。
2022年1月時点で、かなり強いパソコンの組み立て動画を添えておく。
最後に
自身がVRに興味をもったことで、日々目にするニュースの中でVRに関する内容が目に留まるようになった。
今回はその中から「大学生の就職活動とVRの活用」という点について考えてみたが、試してみる価値のある案もあったのではないかと思う。
この内容がどこかの大学生や学校関係者の目に止まり、VR利活用の一助となれば嬉しい。
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