帆船型水上ドローンが作る未来

Jul 31, 2022 23:50 · 2543 words · 6 minute read Podcast drone 社会課題解決

いつも聞いているPodcast「backspace.fm」で、水上を走る帆船型ドローンの話をしていました。

Z-side #036: もはや陸だけではない! 野間さんと考えるモビリティの明日 (backspace.fm)

帆船型水上ドローンの可能性にワクワクしたので、自分が特に気になった部分をブログにアウトプットしてみようと思います。

目次

帆船型水上ドローンはどんなもの?

英語圏ではUSV(Unmanned Surface Vehicle)と呼ばれており、無人で水上を移動するドローンを指します。 この分野を牽引しているセイルドローン社の水上ドローンは、何十日も無人で自律航行したり、ハリケーンに突入しても大丈夫なのだとか。 すでに海洋調査分野で実践投入されているようです。

セイルドローンで世界中の海洋調査、目指すは1000隻編成の無敵艦隊 (newspicks.com)

帆船型水上ドローンを開発している会社

今回ご紹介する帆船型水上ドローンを開発している日本のスタートアップ企業がこちら。

everblue Technologies

元VAIOソフトウェアエンジニア、野間さんという方が代表をしています。

なぜ帆船型水上ドローンを作っているのか?

17世紀や18世紀には、世界中の海を帆船が行き来していました。
「17世紀や18世紀の技術で世界中を行き来できるのであれば、現代の技術を使ったらもっとうまくやれるのではないか?」
そんな思いから帆船型の水上ドローンの開発を始めたそうです。

産業革命により船の多くは動力船になり、帆船の技術革新は19世紀頃で止まりました。 そんな帆船に21世紀のテクノロジーと流体力学、ドローン技術を組み合わせることで海上の可能性にブレイクスルーを起こそうとしているのです。

現代の帆船技術

現代もっとも使われている帆船といえば、ヨットでしょう。 揚力と抗力を活用した最新のヨットレースでは、船は風速の2倍の速度で進み、最高速は100km/hを超えているのだとか。

更に船の舵操作においては、現在のコンピュータは人間よりも遥かに優秀です。 人間が操舵する場合はメートル単位で誤差が発生しますが、コンピュータとGPSを使うことで誤差数センチの正確な操舵を実現できます。

ヨットが進む原理は、この解説動画がわかりやすかったです。

帆船型水上ドローンで実現したいこと

帆船型の水上ドローンを使うことで、エネルギー問題の解決を目指しています。 また、海洋国家日本では、離島で暮らす人の生活を支える物流を改善できるメリットもあります。

エネルギー問題

持続的な発展のために、再生可能エネルギーが注目されています。 しかし、国土の狭い日本では太陽光パネルを設置するにも限界がありますし、太陽光パネルを設置したことによる土砂崩れなどの問題も発生しています。

再生可能エネルギーを生み出すことができるのは陸地だけではありません。 地球の7割は海であり、海には潮力、波力、洋上風力といった多くのエネルギーがあります。 これらのエネルギーを使わない手はないですよね。 しかしながら、これらのエネルギーを送電線で陸地に送ろうと思うと、とんでもないコストがかかります。
「では、エネルギーを電気から水素に変換し、水素を船で運べばいいのでは?」
ここで運搬コストの安い、帆船型水上ドローンの出番です。

帆船型水上ドローンの主な動力は風です。 そのため、時間の誤差にさえ目を瞑れば、モーターやエンジンを動力とする船の1/10のエネルギーで航行することができるそうです。 海上で生み出したエネルギーを自律航行する帆船型ドローンで運搬することで、これまでの大型タンカーによるエネルギーの運搬に比べて、圧倒的にエネルギー伝達経路の自由度が増します。 インターネットが様々な経路でパケットを届けるように、柔軟な経路でエネルギーを運搬できるのです。

物流問題

水上ドローンではエネルギーだけではなく、物や人を運ぶこともできます。 2022年9月には山形県の飛島で、40km離れた離島への航行実験が行われるそうです。 帆船型水上ドローンを使ったコストを抑えた海上輸送が可能になると、離島で暮らす人の移動や物流が便利になりそうですね。

超音波で風を捉えるセンサー

帆船型水上ドローンは風の力を使うため、風を捉えることが大切です。 最新型の風を捉えるセンサーは、超音波を活用しているそうです。三点から超音波を送受信し、風によって生まれた超音波の歪を計測することで、風の向きと強さを計測できるのだとか。

【2022年版】超音波風速計5選・製造メーカー11社一覧 | メトリー (metoree.com)

使っているコンピュータとソフトウェア

搭載しているコンピュータは、フライトコントローラーと呼ばれる空を飛ぶドローンと同じもの、ソフトウェアはOSSのArduPilotをカスタマイズして使っています。

空を飛ぶドローンと同じコンピュータとソフトウェアを使っているので、できることも大体同じで「自動で戻ってくる」というようなこともできるのだとか。

ドローンで使うソフトウェアがOSSで公開されていることを知りませんでした。

帆船型ドローンが作る未来にワクワクした

帆船ドローンの可能性に非常にワクワクしました。

スタートアップ企業として利益を出すのはこれからで、まだ資金集めなどの苦労が絶えないとのこと。自分に投資できるだけの資産があったら投資するのになぁ。 もしこの記事を見かけた資産家の方がいらっしゃれば、野間さんと水上ドローンの作る未来に投資してみてはいかがでしょうか。 海洋国家日本のエネルギー問題、物流問題、人命救助や防衛など、あらゆるところで活躍する可能性を秘めていると思います。

tweet Share